2024-11-08
ビジネス・スウェーデンおよび在日スウェーデン大使館は、日本テトラパック株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:ニルス・ホウゴー、以下、日本テトラパック)共催のもと、10月31日(木)に「Pioneer the possible: 官民パートナーシップフォーラム - 脱炭素における紙容器のリサイクルとサーキュラリティー促進のための官民連携」を開催しました。
本フォーラムには、環境省や東京都をはじめ、紙製容器包装リサイクル推進協議会、亀岡市(京都府)、ゴールドパック株式会社、株式会社トベ商事、NPO法人元気ネットなどが登壇しました。
今年閣議決定された「第五次循環型社会形成推進基本計画」に基づき、今後一層、化石資源由来の製品から紙への切り替え、そしてその回収・リサイクルの高度化が期待されています。そこで、紙容器のリサイクル推進や循環型社会の実現に向け、行政・民間企業・市民の連携について議論を深めました。
(左から)名倉真也氏、藤田孝治氏、國弘武嗣氏、井上雄祐氏、ヴィクトリア・リー氏、
ニルス・ホウゴー氏、カシュテン・グロンブラード氏
業界フォーラムの様子
今年、環境省が発表した「第五次循環型社会形成推進基本計画」に基づき、化石資源由来の製品から紙製品への切り替え、複合素材製品の分別・回収やリサイクルの高度化が推進されることとなりました。
日本における2022年度の紙製容器包装の回収率は、わずか22.9%(*1)であり、アルミ付き紙容器に至っては、さらに低い3.4%(*2)にとどまっています。多くの使用済み紙容器が燃えるゴミとして処理され、再利用されないまま失われている中、この貴重な未活用の資源をリサイクルに繋げるための官民連携の取り組みが、日本各地で進められています。
本フォーラムは、紙製容器包装の回収とリサイクルに関わるステークホルダーが集まり、回収・リサイクルにおける課題や取り組みについて共有、議論することを通じて、行政、民間企業、市民団体との連携を強化し、日本における紙容器のリサイクル推進や循環型社会の実現を目指すことを目的に開催されました。
駐日スウェーデン大使のヴィクトリア・リーは、開会の挨拶において、サーキュラリティは持続可能な未来を実現するための具体的な取り組みだと強調。主に廃棄物を減らすこと、製品や材料を使い続けること、そして再生可能な資源を利用することの3つが主要な目的として挙げられる。人々の働き方や消費パターンに訴え変革につなげる、まさに「Pioneer the possible(可能性の開拓)」が国や地域、組織の枠組みを超えて必要になると述べた。
続いて登壇した、日本テトラパック 代表取締役社長のニルス・ホウゴーは、テトラパック・グループは「大切なものを包んでいます」というモットーのもと、食品、人々、地球を守り、食品をどこでも安全に入手できるようにすることを目指していると述べた上で、グループ全体で環境負荷を削減するため、世界で最もサステナブルな容器開発へ毎年1億ユーロ、世界200社のリサイクル企業と提携した紙容器リサイクルの促進へ毎年4,000万ユーロを投資していると言及。飲料用の紙容器のリサイクル率に関しては、ドイツで75%、スペインで60%を達成しているのに対し、日本におけるアルミ付き紙容器のリサイクル率はわずか3.4%。2050年までに日本政府が掲げるカーボンニュートラルの目標を達成するため、スウェーデンと日本の協力、官民連携のもと、資源リサイクルを拡大したいとした。
環境省 環境再生・資源循環局 総務課 容器包装・プラスチック資源循環室 室長の井上雄祐氏は、国家戦略としての循環経済への移行と紙製容器のリサイクルについて講演した。政府は製造業とリサイクル業が連携する循環型社会の実現に向けた法整備を推進。その中で、特にアルミ付き紙容器のリサイクルには課題があり、皆で議論を進め、新しいリサイクルシステムの構築が必要と強調。そのために、この分野で先を行くスウェーデンから学びを得て、日本とスウェーデンの連携、官民連携、動静脈連携を促したいと語った。
紙製容器包装リサイクル推進協議会 複合品リサイクル推進WG委員長(大日本印刷株式会社 Lifeデザイン事業部 シニアエキスパート)の國弘武嗣氏は、複合素材でできた紙製容器包装のリサイクル率は紙製容器包装全体のリサイクル率の約半分の12.7%と推定。複合品は良質なパルプ含有量が大きいことから古紙不足解消に役立つ可能性があるため回収を進めることが大切だとしている。ただし、課題として「アルミ付き残渣の活用」「汚れた複合品の洗浄」「生活者へのリサイクル啓発」があり、古紙問屋との連携も重要とする。さらに、施策として、上記WG活動を通じた行政への働きかけや、古紙リサイクルの禁忌品緩和の周知、企業や行政の成功事例発信に取り組みたいと述べた。
ゴールドパック株式会社 執行役員 生産本部調達部長の藤田孝治氏は、紙容器入り飲料の製造者の観点から、企業のサステナビリティ活動について講演した。王子ホールディングスとの工場損紙リサイクル・段ボール再生プロジェクトを通じて、アルミ付き紙容器が段ボールにリサイクルされることを紹介。これをもっとアピールし、回収拠点も増やしていくことで、消費者の意識を変化させる必要があると述べた。
亀岡市 環境先進都市推進部 資源循環推進課 副課長の名倉真也氏は、同市は「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」を行い、プラスチックごみの資源循環などに取り組んでいると紹介。昨年9月からは、これまでリサイクルが難しく可燃ごみとされてきたアルミ付き紙容器の回収をスタート。業界全体でアルミ付き紙容器の回収率がなかなか上がらない中、同市は「40kg回収した」という。今後も、紙おむつの回収の実証実験、環境教育などを進め、環境先進都市・亀岡市としてのブランド力を高める考え。
イベント後半のパネルディスカッションでは、田中信康氏(株式会社Sinc 代表取締役社長CEO)が進行役を務め、東京都、株式会社トベ商事、NPO法人元気ネット、日本テトラパックの登壇者が議論を交わしました。
国内における回収・リサイクル率を上げるための課題や、そのための各関係者の役割などについて活発な議論がなされ、各登壇者からは以下のようなコメントがありました。
「自治体は最終処分量の削減のため、リサイクル率を高める様々な工夫をしている。サーキュラーエコノミーを進めていく中で、自治体が資源回収しリサイクルのために次の方に届けるという「プッシュ」の役割を果たすためには、事業者が資源を製品の原料としてきちん利用するために「プル」してくれる仕組みが重要になる。プルしていただけるのであれば、市民に対して自信をもって「リサイクルするために回収します」と情報発信ができる。サーキュラーエコノミーへの実現に向けて、事業者とのコミュニケーションを深めたい。」
「ヨーロッパ各国のホテルやコンビニなどで飲料用容器の紙化が進んでいる。日本でも同様の動きが出てきている。サステナビリティを背景に紙容器が拡大しているが、リサイクルできていない現状がある。新しいリサイクルルート、システムの構築が必要。まさに、官民連携で新たなリサイクルの実証実験を行おうとしている。仕組みを作ることで紙容器のリサイクルの意識を事業系から家庭まで広げることに繋がる。」
「アルミ付き紙容器がリサイクルできると理解している市民はほとんどいない。そして回収拠点が周囲にない環境では、リサイクルできることを啓発しても、まず拠点を作らなければ回収率が上がらない。NPOの地道な活動だけでは回収率を劇的に向上させることはできないと考える。市民にとっては自分が手に取った商品が、すでにリサイクルの循環の中にあるということが理想だと思う。リサイクルに係るそれぞれの主体が資源循環を進めるために本音で話し合い、協調していくことが重要である。」
「現在、スーパーマーケットの協力を得て、アルミ付き紙容器の回収拠点拡大を進めている。民間企業での取り組みではあるが、自治体からも市民へ案内いただき認知向上を期待したい。さらには、燃えるごみの3~4割を占める紙類をいかに資源化するか、行政回収の働きかけを業界団体ワーキンググループで推進している。アルミ付き紙容器の回収を実施している自治体は複数あるため、それらの事例共有や、どうすれば実現できるのかについて、官民で考えていきたい。」
(左から)MC:田中信康氏、大森悠子氏、鬼沢良子氏、戸部智史氏、岩崎貴信氏
本フォーラムの開催意義について、在日スウェーデン大使館 商務参事官 カシュテン・グロンブラードは、以下のように述べています。
「本フォーラムでは、容器に関わるバリューチェーン全体から重要なステークホルダーの皆様を一堂に集め、日本における紙容器リサイクル推進に向けた具体的な議論を行うことができました。特に、多くの地方自治体の関係者の皆様が本フォーラムに参加されたことを大変嬉しく思います。私たちは、地方自治体の皆様の関与が、紙容器の回収・リサイクルの拡大における絶対的な鍵になると信じており、本フォーラムに参加された他のすべてのステークホルダーの皆様とともに、この取り組みを加速させていきたいと思います。」
また、本フォーラムの今後の展望について、日本テトラパック サステナビリティディレクターの大森悠子は、以下のように述べています。
「本フォーラムは、紙製容器包装の資源循環に向けた議論をさらに深めるため、昨年に続き2回目の開催となりました。自治体の皆様への最新情報の共有を目的に、環境省や自治体、業界団体、紙容器の製造・使用・回収に携わる民間企業、市民団体など幅広いステークホルダーが集まり、意見交換を行う場となりました。各所からの事例や課題を共有することで、現在、多くが焼却処分されているアルミ付き紙容器をはじめとする紙製容器包装をいかに資源化できるか、まさに「Pioneer the possible」のテーマの下、ステークホルダー横断的なアプローチを考える貴重な機会となりました。本フォーラムで得られた知見やネットワークを活かし、今後とも、関係各所、官民連携を通して、持続可能な社会に向けた資源循環を推進してまいります。最後に、本フォーラムの主催であるスウェーデン大使館およびビジネススウェーデンのご協力に心より感謝申し上げます。」
Pioneer the possibleプラットフォームは、2022年にスウェーデン大使館とビジネス・スウェーデンによって立ち上げられました。このプラットフォームは、スウェーデンと日本の企業、政府機関、研究機関の各セクターのステークホルダーが社会課題に共同で取り組むサステナビリティ協働プラットフォームです。プラットフォームでは、3つの重要なテーマであるサーキュラリティ、エネルギー、モビリティに焦点がおかれています。それぞれのテーマで具体的な課題が定義されており、パートナーと一致団結して影響力のあるソリューションとイニシアチブを共につくりあげることを呼びかけています。
*1:「2022年度紙製容器包装回収率」(紙製容器包装リサイクル推進協議会)
*2:「アルミ付飲料用紙容器のリサイクルフロー調査報告書(2022年度実態)」(印刷工業会液体カートン部会/㈱ダイナックス都市環境研究所)
※本プレスリリースにおいて、全部・一部を問わず、画像の無断転載を禁じます。
スウェーデン大使館商務部/ビジネススウェーデンは、スウェーデン政府の使命として、スウェーデン企業の国際化を支援し、日本企業とスウェーデン企業のパートナーシップを構築し、ビジネス展開を図ることを目的として掲げています。
在日スウェーデン大使館は日本においてスウェーデンとスウェーデン政府を代表しています。
テトラパックは、1951年にスウェーデンで誕生した食品加工処理と紙容器充填包装システムの世界的なリーディング・カンパニーです。世界160カ国以上のお客様のニーズを満たすため、安全で栄養価の高い食品を提供しています。世界中に24,000名以上の従業員を擁するテトラパックは、食品をどこでも安全に入手できるようにすることを約束し、「大切なものを包んでいます (PROTECTS WHAT’S GOOD) ™」というモットーのもと、食品、人々、そして地球を守ります。テトラパックは、テトラパックグループの商標登録です。更に詳しい情報につきましては、下記をご覧ください。
ウェブサイト:www.tetrapak.com/ja-jp
広報代理 シェイプウィン株式会社
press-tetrapak@shapewin.co.jp