イエメンの学童たちに強化ミルクを届ける協働の事業

課題 - 幼児期の栄養不良と食品配給の障壁

イエメンでは、食品の安全と栄養に関する大きな課題が存在しています。 ユニセフの報告書では、イエメンの子供たちのほぼ半数(45%)が深刻な発育不全に陥っていると述べられています 1。 世界食糧計画(World Food Programme、WFP)によると、イエメンでは5歳未満の220万人の子供が急性栄養失調に苦しんでおり、そのうち54万人以上が重度の急性栄養失調に苦しんでいます。 同国における子供の衰弱の度合いは世界で最も高く、25%を超える地域もあります。2

教室にいる生徒たち

イエメンの子供たちの就学率、教育の維持、修了を向上させるため、イエメン教育省は世界食糧計画の支援を受けて、180万人(3)の子供たちを対象に緊急学校給食プログラムを実施しています。 しかし、冷蔵設備や飲料水の不足、貧弱なインフラ、物流の課題など、このプログラムは多くの課題に直面しているため、多くの子供たちが安全な栄養を摂取することが困難になっています。

取り組み - UHT技術による課題の対処

学校における食品の安全性と安全な栄養へのアクセスの問題に対処するため、HSA グループ(イエメン発足の国際複合企業)、その子会社 NADFOOD、Tetra Pak Arabia Area、Tetra Pak Food for Development の協力により、イエメンの学校で1万人の子供たちに強化ミルクを提供する取り組みが開始されました。 紙容器の UHT ミルクは、添加物を使用せずに現地で食品加工処理され、微量栄養素とビタミンを強化して現地の栄養不足に対応しています。 製品を安全に学校に配布するにあたって、テトラ・ブリック® アセプティック容器125mlが選ばれました。

テトラ・ブリック アセプティック紙容器と男児学童

「イエメンの若者たちは、国内で進行中の食品の安全性の危機に起因する栄養の偏りに苦しんでいます。 その結果、発育や将来性が損なわれた子供たちの失われた世代が生まれつつあります。 テトラパックは、知的・身体的成長にとって不可欠な時期にある若者たちが直面する、こうした課題による負担の軽減を目的とした、この変革的なプロジェクトを支援できることを誇りに思っています。 テトラパックとのパートナーシップにより、イエメンの若く野心的な人々の健康と福祉を支援し、才能を育み、可能性を引き出すことができれば幸いです。」

– Hisham Ali Mohamed Saeed 氏、HSA イエメン FMCG 戦略事業部副事業部長

無菌食品加工処理と紙容器充填では、滅菌された紙容器に超高温(UHT)処理された液体を充填します。 このような食品加工処理は、世界中の多くの学校給食プログラムを実行可能にするうえで非常に重要です。 信頼できるコールドチェーンがない、学校に冷蔵庫がない、電気を安定して利用できないといった国々では、UHT 技術によって、学校用牛乳をタンパク質、カルシウム、ビタミン D などの主な栄養素を保持したまま、冷蔵せずに6~12ヶ月間保存できるようになります。これにより、最も遠隔な地域に住む子供たちでも、確実に安全で栄養価の高い牛乳を手に入れることができます。

毎日の配送が不要になるため、輸送コストが大幅に削減されます。 これにより、電力使用量の削減や廃棄物の削減と相まって、無菌紙容器充填を費用対効果の高いソリューションを実現しています。

イエメンの学童

「イエメンの子供たちにとって、食品の確保は現実の問題です。テトラパックの UHT 技術のおかげで、1万人の子供たちに成長に必要な栄養を提供し就学の支援もできます。 これは Tetra Pak Arabia にとって重要なプロジェクトであり、テトラパックのお客様である HSA グループと連携できることを大変嬉しく思います。 私たちは協力して、イエメンの子供たちのために変化を起こす取り組みを始めました。」

– Niels Hougaard、Tetra Pak Arabia 地域担当マネージング・ディレクター

価値

定期的に栄養を摂取することで、子供たちの健康状態を改善し、学校に通う積極的なきっかけとなり、非識字率も低下するはずです。 地元で食品加工処理された牛乳が学校で利用されることで、子供たちの健やかな成長と学習能力の向上に貢献すると同時に、地元産品の市場が形成されます。 酪農バリューチェーンへの介入による開発は、小規模酪農家世帯の貧困に対処する雇用と持続可能な暮らしを創出することにもつながります。

学校給食を受け取る少女たち

「NADFOOD とを支援するため、私たちは世界中の学校給食プログラムで使用している経験とベストプラクティスを共有しています。 このように連携することで、イエメンの学校給食用ミルクプログラムの効率と効果をできる限り高める支援ができると同時に、小児栄養不良との闘いにおける進展に向けて組織間の絆を深めることができます。」

– Food For Development 副社長、Rafael Fabrega氏

学校給食プログラムが子供たちの教育と健康に与える影響を理解するため、国際食料政策研究所(IFPRI)は影響評価調査を実施します。 IFPRIは、世界規模の組織で、研究に基づいた政策解決策を提供して、開発途上国の貧困を持続可能な形で削減し飢餓と栄養不良をなくす取り組みを続けています。 この研究は、学校給食用牛乳が子供たちにもたらす教育的・健康的メリットについて、重要な証拠を提示することでしょう。

栄養面でのメリットに加え、学校牛乳プログラムの重要な要素は、使用後の空の飲料用紙容器を回収することになります。 子供たちは紙容器を平らにし、所定の場所へと置くように教わります。 この処理により、学校からの回収が容易になるだけでなく、空の飲料用紙容器が校庭に散乱することがなくなります。 啓発活動に加え、環境とリサイクルのイニシアチブがこのプログラムの重要な要素となります。

テトラ・ブリック・アセプティック容器を持つ少女

今後の展望

このイニシアチブは、2023年10月から毎日、イエメン全土の 1 万人の子供たちに安全な強化 UHT ミルクを学校の授業中に提供することを目的としています。イニシアチブの第 2 段階では、テトラパックと HSA グループが、、子供たちに提供する食品の種類を増やすために、イエメンの学校給食向けに手頃な価格の栄養価の高い乳製品と穀物ベースの飲料のセットを考案し進展させる計画を立てています。 このように、テトラパックは、イエメンの子供たちがもっと容易に安全な栄養を手にできるようにという共通の目的に向けて、連携して取り組んでいくことを約束します。

1 UNICEF、ニュース、2022年4月7日

2 世界食糧計画(World Food Programme、WFP)、 イエメンにおける食料不安の現状、2017年4月

3 世界食糧計画(World Food Programme、WFP)、ニュースリリース、2023年8月18日