2020 年 9 月 10 日

既成概念にとらわれない思考: アイスクリームメーカーがイノベーションによって新型コロナウィルスの課題を克服する方法

例年通りの夏であれば、ほとんどの人が暑い日に食べるアイスクリームを日常的に楽しんでいたことでしょう。 高くそびえるトリプルスクープのジェラートから、チョコレートを贅沢に使用したスティックタイプまで、アイスクリームは夏の味の代名詞です。

しかし今年は、いつもとは違う夏を迎えることになりました。 北半球ではアイスクリームのピークシーズンとなるはずでしたが、ほとんどのアイスクリームパーラー、ショップ、レストランが数か月間閉鎖されることになったのです。 公園でのんびりとした夏の日を過ごしたり、甘いアイスクリームを楽しむ光景は見られず、私たちの生活はソーシャルディスタンスや都市封鎖による影響を受けることになりました。

そのような状況でもアイスクリームは依然として世界的に人気のある食べ物で、業界は供給を継続するために素早い対応が求められました。

多くのアイスクリームメーカーを支援したのは、世界をリードする食品加工とパッケージングのソリューション企業であるテトラパックでした。 このような困難な状況の中でも、テトラパックはアイスクリームメーカーが現状に適応し、将来的に繁栄できる新しい成長のチャンスが生まれていると考えています。

家庭でのくつろぎ

「世界のアイスクリームの約半分は、テトラパックの機器を使用して製造されています」と、テトラパックでアイスクリームソリューションのマネージングディレクターを務める Peter Lindstrom は述べています。テトラパックはアイスクリーム業界において、他社には真似できない役割を果たしています。 テトラパックは、一言で言えば、アイスクリーム製造機器を提供するリーディングカンパニーです。混合プラントから、冷凍庫イングレディエントドーザー押し出し成形、ラインの最終段階を扱うソリューションまで、加工処理、自動化、技術サービスをシームレスに統合します。

テトラパックでアイスクリーム用ソリューションを担当するイノベーションマネージャーの Per Henrik Hansen、マネージングディレクターの Peter Lindström
アイスクリーム押し出し成形ホイール

Peter によると、都市封鎖により世界はその機能をほとんど停止しましたが、何かを楽しむことは止められませんでした。 消費者の志向は慣れ親しんだ環境から安心を求める方向にシフトし、家庭でのくつろぎとして、おいしい食べ物を楽しむようになりました。 これに伴い、衝動的に個食タイプの製品を買う傾向が低下し、代わりに高級アイスクリームをマルチパックで購入する傾向が強くなっています。

「市場の大手ブランドはアイスクリームの需要急増を間違いなく感じているはずですが、それを担うのは明らかに個食製品や外食産業ではなく、持ち帰り用のバルク製品やマルチパックです」と Peter は説明します。 「たとえば、都市封鎖によって中国での高級製品の売上が 40% 増加したというお客様もいます。その大きな原動力となったのが、消費者が箱入りスティックタイプのアイスクリームを注文すれば1 時間以内に配達する、eコマース業者です。」

このトレンドは中国に限ったものではありません。 米国やその他の地域のメーカーも大幅な成長を遂げています。

このような困難な時期に成長の機会が生まれることは、かなり予想外でした。 Peter によると、ニーズを満たすために、メーカー各社は、適切な流通経路が利用でき、かつ高級製品に重点を置きながら、加工処理と容器包装のラインを個食製品用からマルチパックの生産用に迅速かつ容易に転換できる機器を用意する必要がありました。 また、流通経路も同様に重要であったと Peter は言います。 「私たちが目にしているのは、小さなキオスクやレストランなどでの販売が中心の小規模ブランドの苦戦です。このようなブランドは、スーパーマーケットの売り場でスペースを確保できず、衝動買いや外食産業に依存しているためです。」

高級アイスクリームノベルティ志向の高まり

しかし長期的には、すべてのアイスクリームメーカーが、アイスクリームに対する世界的な需要の高まりの恩恵を受けられる可能性があります。 Peter は、衝動買いは減少するものの、計画的な購入が増加することで、全体的な消費量は伸び続けると予想しています。 現在、革新的なプレミアム製品に投資している各社は、将来的に大きく好転する可能性があります。

「成長を支える大部分は、低価格製品ではなく高級製品です。消費者はその美味しさを本当に楽しみ、進んで高級製品を選択しています」と Peter は話します。 消費者は都市封鎖の中で、プレミアムで斬新な味を持つ魅力的なアイスクリームの存在に気付きました。特にフルーツや塩キャラメルなど、「具材」が入ったアイスクリームに人気が集中しました。

この状況下でも変わらないもう 1 つのトレンドが、持続可能性です。 新型コロナウィルス流行の状況でも、消費者は依然として企業が環境目標を遵守することを期待し、持続可能な製品を望んでいます。

Peter は、持続可能性に対する需要は高級志向の傾向と対立せずに、むしろそれを後押ししていると述べています。 「高級製品を好む人々は、持続可能な方法で生産されていることが分かれば、さらに高い代金を支払ってもよいと考えています。」

業界を後押しするもう 1 つの大きなトレンドは、乳製品を含まないアイスクリームの人気が高まっていることです。 消費者が乳製品フリーの製品を選ぶ理由はさまざまで、健康上の理由、食物アレルギー、または動物愛護や持続可能性に対する関心が挙げられます。 しかし、消費者が植物由来の製品を選ぶ傾向が高まっている一方で、最終的には、やはりアイスクリーム本来の魅力をすべて楽しめる製品を求めています。 それは、リッチでクリーミーで豊かなフレーバーを持つ製品で、メーカーにとっては乳製品以外で達成するのが難しい要素です。

Peter は、「消費者が求めるのは、やはり贅沢感のある製品です。舌触りに遜色がなく、乳製品ベースのアイスクリームにほぼ匹敵するものでなければなりません」と述べています。 そこで威力を発揮するのが、新製品の開発におけるテトラパックの専門知識です。テトラパックでは、乳製品由来か植物由来かを問わず、アーモンドやフルーツからたっぷりのチョコレートまで、あらゆる具材を備えた美味しいアイスクリームを製造するために、独特で複雑なレシピを開発し微調整できるようにお客様を支援しています。

製品試用(移動制限期間)

世界各国の 10 か所に展開するプロダクトディベロップメントセンター(PDC)は、ワンストップショップとして機能する専門センターで、新しい製品やカテゴリーを試すことができます。 ここでは独自の設備を備えて、費用効果と時間効率が高く、かつ、実験やテストのために生産ラインを閉鎖する必要がない柔軟性の高い方法で、食品・飲料製品を開発したりレシピ変更したりする技術的課題と機会に対処しています。

その柔軟性は、新型コロナウィルス流行による渡航制限を受けて試されることになりました。 Peter と彼のチームメンバーは、デンマークのオーフスにあるアイスクリーム専門の PDC センターから、ロックダウンが実施されている遠隔のお客様に対して、ライブストリーミングによる製品試用でイノベーションを支援しています。

バーチャルであろうと対面であろうと、製品の試用はアイデアから始まります。 「新しいアイスクリームは、お客様の施設またはテトラパックの施設で開発されます」と Peter は説明します。 テトラパックを訪ねるお客様はほとんどが、彼の表現を借りると「クレイジーなアイデア」を持ったお客様です。 ただしテトラパックには、多彩な原材料を見つけ出し、次世代のアイスクリームをアイデアとして形作る社内のコンシューマブルグループもあります。 「私たちは協力して、メーカーの発想力を刺激する、独自のクレイジーな製品の製作に取り組んでいます。」

製品開発の試行錯誤が始まるのはここからです。テトラパックは専門知識や設備、そしてもっとも注目すべきエクストルージョンホイール技術を駆使して、レシピをテストします。 Peter は次のように述べています。 「必要なのはテストです。 それは持続可能か? 美味しくてクリーミーか? マイナス 25 度で凍らせたらどうなるか?といったことをテストします」

製品の見た目やイメージに関しては、遠隔地からでもライブで製品の試作をフォローできるため、リアルタイムで簡単に評価できます。特定のマシン内で何が起こっているのかを確認することもできます。 ただし、非常に重要な食感を確認する試食や試飲については、試験自体から得られたサンプルをお客様にお届けするようにしています。 「ですから、味までデンマーク人に任せるわけではありませんよ」と彼は笑いながら話します。

加工処理から容器包装まで

イノベーションは味と食感だけにとどまりません。 Peter は、消費者がスーパーマーケットの棚で最高品質の新製品をできるだけ早く入手できるように、新製品開発のあらゆる側面を検討する必要があると述べています。

需要の変化に対応するために、現在テトラパックでは、多くのお客様が、製品のすばやい切替えを実現するテトラパックの先駆的な機器を使用して、生産ラインをアップグレードまたは拡張できるように支援しています。

パンデミックの間も、お客様は「プレミアム製品の生産に対応できるプレミアムな機器」への投資を続けました。 すでにテトラパックでは、多くのお客様が新型コロナウィルス感染の状況にかかわらず、2021 年に向けてアップグレードや拡張に投資していることを確認しています。

また、家庭での消費傾向は、創造的な紙容器オプションの需要の増加にもつながっています。 「私たちはパートナーと協力して、マルチパックに対応した製品の開発を引き続き進めるとともに、複数の製品を 1 つのパックにまとめることができるさらに優れたソリューションも作成しています。」

最後に Peter は、「消費者にとって重要なのは、光沢があり美味しそうに見えることです。 消費者は目で見て購入を決めるからです。」と述べています。

柔軟で先進的な考え方に満ちた冷凍製品の未来

アイスクリームは、世界中の多くの人々にとって、日常の中で、ささやかながらもっとも大きな楽しみの 1 つです。 しかし、その製造方法は単純ではなく、フレーバーと形状のトレンドが進化し消費者の行動が変化する中で、企業はあらゆる接点で持続可能であることが求められています。

テトラパックは、世界レベルの専門知識と最先端のトータルソリューションを通じて、アイスクリームメーカーに手間のかからない柔軟なソリューションを提供するだけでなく、効率、品質、持続可能性の向上や、消費者中心のイノベーションの促進にも取り組んでいます。

Peter は、世界のアイスクリーム生産量の半分に影響を与える重要な役割を果たしている人物と認識されており、彼の見識は、アイスクリーム業界にとってこの上なく興味深いインサイトを提供してくれます。 しかし、最後にこの質問をしないわけにはいかないでしょう。 それは、彼自身がどのようなアイスクリームを好きか、ということです。 この質問に対して Peter は、「それは自分の子供のどちらかを選ぶようなものですよ」と答えています。 「好みは毎日変わりますね。自分自身が身を置いている分野なので、すべてのアイスクリームが好きです。」 もしも未来のアイスクリームフレーバーをあなただけが手にできるとしたら、文句なしじゃありませんか。

さまざまな種類のアイスクリーム